2019年8月7日から10日まで秋田県大潟村・ソーラースポーツラインで開催された「2019ワールド・グリーン・チャレンジ」(WGC)で、東海大学熊本キャンパスのソーラーカーチーム「TOKAI NEXTAGE」が、3日間に及ぶレースで、ソーラーカーアドベンチャークラスで優勝(総合2位)する活躍を見せた。
システムフォレストが実践する地域社会貢献「1-1-1(ワン・ワン・ワン)モデル」の産学連携ボランディアの一環として2018年からIoTを活用し支援しており、2018年のレースでは「ソーラー発電 • モーター消費 • バッテリー放電をリアルタイムに可視化」し、2019年のレースでは「車速や位置情報の計測機能、そして遠隔からドライバーとのコミュニケーションをとるためのシステム」でチームを支援。レースの躍進を陰で支えた。
車体のリアルタイムなデータ分析が可能になったことで、突然のパンクによるモーター・バッテリへの負荷上昇といった車両トラブルの検知に効果を発揮するとともに、的確なレース戦略づくりにも同社によるIoT活用支援はその効果をいかんなく発揮した。
絶えず変化するレースという環境の中で、IoT活用で果たした役割とは、またレースに挑戦した学生らがモノづくりと実践の中で感じ取ったものは。東海大学ソーラーカーチーム「TOKAI NEXTAGE」の監督で、東海大学熊本校基盤工学部の清田英夫教授ならびに、ほか学生メンバーら5人に話を聞いた。
ソーラーカーからのデータをリアルタイムに可視化
IoTクラウドシステム導入の成果は
今回発電、モーターの電力消費、バッテリー放電の状況をリアルタイムで検知し可視化できるシステムを、システムフォレストさんの協力で導入しレースにのぞみました。
レース会場は秋田の八郎潟という場所で、電波の届きにくいところで、ほとんどぶっつけ本番でしたがちゃんと稼働してくれました。10キロ先を走っているソーラーカーから送られるデータを、ぼくらはパソコンやスマホでリアルタイムで確認できました。その結果、天候による発電量の変化が把握でき、次年度に生かせるデータ収集ができたのは大きな収穫でした。またソーラーパネルの発電量やバッテリーの使用量についてもリアルタイムでデータから読み取ることができ、走行状況が細かく把握できるようになりました。そのためドライバーに対しても的確な指示が可能になり、いままでのように会話が途切れがちな携帯電話での頻繁なやりとりが必要なくなり、ドライバーの負担も減りました。
刻々変化するデータを分析し状況に合わせたレース戦略が容易に
レースの内容は
三日間の日程で、一日あたり8時間を連続して走り続け、走行時間25時間でいかに長い距離を走るかを競うレースです。IoT を活用したことで、車両に取り付けられた各種センサーが検知したデータを、パソコンやスマホでリアルタイムに確認できるため、車両の状態がより把握しやすくなりました。実は今回のレース中、バッテリーからの給電は正常なのに、スピードが出ていないというトラブルが発生し、原因がパンクだということが分かりました。これもリアルタイムで正確なデータ送信が可能だったからこその結果だとおもいます。また刻々と変化する車両から送られるデータを分析することで、バッテリー消費を最小限に抑えた加速のさせ方をドライバーに指示したりといったことも可能になり、現場の状況に合わせたレース戦略が立てやすくなりました。
2019年度のレースではどうだった
今回は車速や位置情報の計測機能を提供いただいたことで、以前は先生からの電話で車速はどのくらいなのかと聞かれ、この車速でこの程度の消費なんだと先生が判断していたのですが、その電話がなくなったので、より運転に集中することができました。雨で路面の状態が悪く、運転に集中したい状況や、車運転するときはスピードメーターだけみて運転するわけにはいかないので、丁寧な加速ができるようになりました。
また、位置情報がリアルタイムにわかることで、ピット作業のための準備が事前に可能になり、ピット作業自体も迅速に行うことができました。それが今年の総合二位という結果に結びついのではないかと思います。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2019年12月当時のものです。